「家に帰りなさい」
「『この息子は、死んでいたのに生き返り、いなくなっていたのに見つかったからだ。』そして祝宴を始めた。」
聖書 ルカ福音書15章24節
子どもの頃、言葉にできない苦しみを持っていた私は、その苦しみを忘れるために繰り返し盗みを行っていました。ですから盗みは悪いことだと分かっていても止めることはできなかったのです。もちろん、この姿は私にとって誰にも見られたくない恥ずかしい姿でした。その姿をある日、母親に見られてしまい、私はもう家にはいられないと思って家を出たのです。
行くところのない私は誰も通らないような道の端にうずくまり、早く夜になって欲しいと願いました。暗闇が私を隠し、そのまま消えさせてくれると思ったのです。そして暗闇は一度そのように私を隠してくれたのです。ですが、すぐに一人のおじさんが暗闇の中にいた私を見つけ、近づいて来てこう言ってくれたのです。「家に帰りなさい。家の人は君のことをきっと心配している。」とても温かい声でした。だから暗闇の中でおじさんの顔は見えなかったのですが、今もこのことは感謝をもって思い出すことができます。
このことをお話したのは、私の恥ずかしい姿を知って欲しいからではありません。私の経験したことと同じ話が聖書に出てくることを知って欲しいからです。それはイエス様が話してくれた放蕩息子の物語です。
一人の息子が父親から財産をもらい、家を出て、すべて使い果たしてしまいました。そこで彼は我に返り、父親のもとに帰る決心をしました。ただし、自分はもう息子と呼ばれる資格はないと思っていたので、雇い人の一人にしてもらうつもりでした。この息子を父親はどう迎えたでしょう。まだ遠く離れていたのに、父親は息子を見つけ、走り寄って抱きしめ、反省の言葉は聞かず、ただ傷ついていた息子が回復するようにと家に迎え入れたのです。
この息子はどうして愛する父親の家に帰ることができたのでしょう。ちゃんと反省したからではないのです。「家に帰りなさい」という温かい言葉を聞いたからなのです。